# 競合情報の効果を、こじつけなしで示す:3つの指標と計算例 競合インテリジェンスのROI倍率は出さず、同条件の案件での競合勝率、受注・失注案件でのバトルカード利用、競合の動きへの対応時間の3指標で示す手順と、架空の数値での計算例です。 URL: https://www.hiresteve.ai/ja/blog/prove-ci-impact-metrics 最終更新: 2026-10-12 競合インテリジェンスの投資対効果を倍率で報告するのはやめます。予算や更新の審査で守れるのは3つです。特定の競合に対する同条件の案件での勝率、受注した案件と失注した案件でその競合のバトルカードが開かれていたかどうか、競合の公開された動きからカードの更新までの時間です。それぞれに定義、データの出所、既知の弱点があり、審査で聞かれるのはその弱点です。 ## ROI倍率が最初の質問に答えられない理由 競合インテリジェンスのベンダーの一部は目立つ数字を掲げますが、確認したページには、その数字の方法が示されていません。KlueのMeasureページ(英語、2026年10月7日閲覧)は「勝率35%向上」「競合勝率50%向上」を掲げますが、標本数、期間、比較基準はページ上にありません。[Klue自身の指標ガイド](https://klue.com/blog/competitive-intelligence-metrics-kpis-dashboard)(英語)は、独立した2つの変数の因果を直接証明するのは非常に難しいと認めたうえで、予測した勝率向上を現在の売上に当てはめて説明することを勧めています。[CrayonのMeasureページ](https://www.crayon.co/product/measure)(英語)は、影響売上を「競合資料の利用のおかげで受注した売上」と定義しており、この定義は、本記事が証明できないとする帰属を前提にしています。[KompyteのROI記事](https://www.kompyte.com/blog/roi-of-competitive-intelligence)(英語、2024年5月31日)は「バトルカードを使う担当者は勝率35%向上と報告」をスライド見出しの例として挙げています。同じ記事は、複数チームにまたがる効果測定は難しい場合があるとも書いています。 ROI倍率には比較対象が必要です。同じ案件が施策なしでどうなったかを知る必要があり、それは分かりません。カードを開く担当者と開かない担当者は、もともと違います。価格、製品、人員は同じ四半期に変わります。CRMの競合名の項目は、遅れて、または誤って入力されます。競合ごとの決着案件は、そのぶれを越えて何かを読み取るには少なすぎることがほとんどです。経営層が確かめられる数値を報告し、それぞれが何を示し、何を示さないかを添えてください。[CI Allianceの効果測定に関するインタビュー](https://www.competitiveintelligencealliance.io/measuring-roi/)(英語、2022年8月2日)は、勝率の変化のように測れる成果と、測れない成果を分けています。資料の中でも、この2つは分けて書きます。 なお、競合インテリジェンスの効果測定を扱う情報源は、確認した範囲では英語のベンダーページだけでした。日本語の情報源としては、勝率分析の一般的な手順を扱う記事を使っています。 ## 指標1:同条件の案件での競合勝率 競合勝率は、特定の競合名が記録された決着案件のうち、受注した案件の割合です。成約数÷(成約数+失注数)で求め、同じセグメント、同じ案件規模、同じ地域の中で四半期ごとに出します。スタートリンクの[営業データ分析入門](https://start-link.jp/hubspot-ai/btob-marketing/crm-basics/sales-data-analytics)(2026年10月5日更新、2026年10月7日閲覧)も、勝率分析は対象に含める取引と期間を先に決め、同じ条件で比較する手法だと説明しています。全社の勝率を1つにまとめると、大企業向け案件にしか現れない競合と、セルフサーブにしか現れない競合が混ざり、カードとは関係のない理由で数字が動きます。 勝率を読む前に、各区分の件数を数えてください。当社の目安は、約20件未満の区分は解釈しないことです。これは編集上の目安で、出典のある基準ではありません。同じスタートリンクの記事も、軸を増やすほど各区分の取引が減るため、差を見つけたら件数と対象の取引を確認するよう勧めています。件数が足りない場合は、セグメントではなく期間を広げ、同条件の比較を保ちます。 弱点はCRMの競合名の項目です。任意項目で、失注した担当者が決着時に思い出して入力し、受注案件では誰も聞かないので空欄のまま、という状態なら、割り算の前に分母が崩れています。指標1の精度はこの項目の精度と同じです。だからCRMの節を、どのグラフよりも先に置いています。 ## 指標2:受注案件と失注案件でのバトルカード利用 競合が関わった決着案件ごとに、案件の担当者が決着日より前にその競合のバトルカードを開いたかどうかを記録します。そのうえで、開いた群と開かなかった群の勝率を比べます。利用に結果を結びつけた指標で、[定着指標の記事](/ja/blog/ci-tool-shelfware-adoption-signals)で扱う閲覧数では答えられない問いに答えます。担当者がカードを使った案件は結果が違ったのか、という問いです。 同じ文の中で、これは相関だと書いてください。優秀な担当者は何でもよく開きます。順調な案件ほど準備に時間がかけられます。比較を正直にする方法は2つあります。同じ担当者の中で、開いた案件と開かなかった案件を比べること。そして、Kompyteの記事が説明する対照群です。1つの営業サイクルのあいだ、一部の担当者だけにバトルカードを配り、配らなかった担当者を対照群とします。これは因果を支えうる設計で、代償は1サイクル分の部分展開です。同じ記事は、成功の鍵は配布でも閲覧でもなく利用だと述べています。 ## 指標3:競合の動きから対応までの時間 競合の公開された変化、たとえば新しい料金ページや発表記事から、バトルカードやSlackの通知にそれが反映されるまでの時間を測ります。競合インテリジェンスのチームが最初から最後まで自分で握れる唯一の指標です。変化を見つけた時刻、更新を公開した時刻、更新した人を記録します。 売上については何も主張しません。それが審査での強みで、誰にも反論されません。多くのチームが抱える問題も見えます。発売日には最新だったカードが、次の四半期には古くなっているという問題です。平均ではなく、中央値と最悪値を報告します。 **3つの指標でできること** - それぞれに文書化した定義、データの出所、同条件の規則があり、別の人が再計算できます。 - 同条件の案件での競合ごとの勝率は、営業の責任者がすでに理解している数字です。 - 受注・失注案件でのカード利用は、閲覧数だけを報告する代わりに、利用を結果に結びつけます。 - 対応時間はチームが完全に握っている指標で、反論の余地がありません。 **3つの指標でできないこと** - どれも、施策が受注の原因だったとは証明しません。証明しうる設計は対照群だけです。 - 競合ごと、四半期ごとの件数が少ないと、勝率はぶれの中に埋もれます。 - 競合名の項目が誤っているか任意なら、指標1と2は始める前に崩れています。 - 同じ期間の価格、製品、体制の変化は切り分けられません。 ## 架空の数値での計算例 **この節の数値はすべて架空です** 以下の案件数、件数、勝率はこの記事のために作ったもので、計算の手順と限界を示すためのものです。実在する顧客のCRMからは取っていません。 Acmeとの中堅企業向け案件を考えます。第1四半期にAcmeが関わった案件を40件決着させ、12件を受注しました。勝率は30.0%です。第2四半期の初めに新しいカードを配りました。第2四半期は44件を決着させ、18件を受注し、勝率は40.9%です。 約11ポイントの向上はスライドに載せたくなりますが、四半期あたり40件と44件では、まだ載せられません。95%のWilson区間(当社の計算)は第1四半期が約18%から45%、第2四半期が約28%から56%で、2つの四半期は重なります。この変化は四半期ごとのぶれと区別できません。正直に書くなら、勝率は望ましい方向に動いたが、カードが原因だと言うにはより多くの決着案件か対照群が必要だ、となります。スタートリンクの記事も、区分間の差だけでは原因は確定しないと述べています。 次に、第2四半期の案件で指標2を見ます。受注18件のうち14件(77.8%)でカードが開かれ、失注26件のうち12件(46.2%)で開かれていました。開いた案件のほうがよく受注しています。そのとおりに書き、カードが受注の原因だと示すものではないと添えます。カードを開く担当者は、もともと受注する担当者かもしれないからです。 質問に耐えるスライドは3行です。Acmeに対する中堅企業向けの勝率、30.0%から40.9%、40件と44件、まだぶれと区別できない。第2四半期の受注の78%、失注の46%でカードを開いていた、相関のみ。Acmeの公開された動きへの対応時間の中央値と、最悪だった事例。 ## 言えることと言えないこと - 特定の競合に対する勝率を、1つのセグメントと期間の中で、件数を添えて報告できます。 - カードを開いた案件の勝率が高かった、または低かったことを、相関として報告できます。 - 競合の動きへの対応の速さを、中央値と最悪値で報告できます。 - 対照群か同じ担当者の中での比較を行い、どちらを行ったかを明記しない限り、施策が売上の何割かを生んだとは言えません。 - ベンダーの勝率向上の数字を自社の基準にはできません。読んだページのどれも方法を示しておらず、望ましい向上幅の基準も見つかりませんでした。 - 数件しかない区分の勝率は、差がどれほど大きくても読めません。 ## SFAやCRMで崩れる箇所 結果に関わる2つの指標は、1つの項目に依存します。案件に関わった競合名です。グラフを作る前に3点を確認します。その項目がどこかの段階で必須か、それとも任意で担当者が思い出したときだけ埋まるのか。決着時に失注した担当者が入力するのか、それとも案件が進行中のうちに入力されるのか。受注案件にも競合名が入っているのか。失注案件にだけ競合名を記録する運用では、競合勝率はゼロに近くなりますが、それは項目の作りが生んだ見かけであって、結果ではありません。 日本のSFAでは、この項目が任意になっていることがあります。前述のスタートリンクの記事の項目一覧では、商談情報の「競合情報」と、受注・失注情報の「失注理由、競合名」が、必須ではなく「任意だが推奨」に置かれています。1つの記事からの一般化はできませんが、自社の設定を確認する理由にはなります。CRMの失注理由と買い手の回答のずれは、[同じ案件の上で照合する記事](/ja/blog/win-loss-vs-crm)で扱っています。 項目が信頼できないなら、先に項目を直し、その間は指標3を報告します。推測で埋めた1年分より、きれいな1四半期分のほうが価値があります。競合名をどう記録したかと聞かれたら、一文で答えられるようにしておきます。 ## Steveが担う範囲と、変わらない規則 SteveのIntelligent Deal Detectionは、HubSpotとSalesforceの中で動きます。新しい案件ごとに競合を提案し、担当者が1件ずつ、または一括で承認します。録音した商談を案件に紐づけ、バトルカードへのリンクを案件に書き込み、案件は毎晩と任意のタイミングで同期されます。そのデータの上で、Steveを使った案件と使わなかった案件の勝率と案件規模を競合ごとに示し、各案件のカードが何回開かれたかを示します。案件が決着すると、Steveの受注・失注分析が買い手にインタビューするので、理由が結果の隣に並びます。Deal DetectionはTeamプランの機能で、Starterには含まれないと、サイトは2026年10月7日時点で述べています。 この画面は、自社のCRMデータの上での指標1と指標2です。競合名の項目は、決着時の担当者の入力ではなく、提案を承認する形で埋まります。ただし、上の規則は変わりません。サイトはROIの数字、最低件数、担当者別の表示のいずれも述べていません。「使った・使わなかった」の比較には、「開いた・開かなかった」の比較と同じ交絡があるので、同条件の規則と件数の下限は、引き続き自社で適用します。競合が1、2社で、競合名の項目を自分たちで埋め続けられるなら、上の表計算で足ります。項目を埋め続けることが難しい、または勝率の隣に買い手の理由を置きたいなら、[Steveの受注・失注分析](/ja/products/winloss)を確認してください。 ## よくある質問 ### 競合インテリジェンスのROIは計算できますか? 根拠を持って示すことはできません。ROI倍率には「施策がなかった場合」の比較対象が必要で、それは手元にありません。Klue自身の指標ガイド(英語)も、2つの変数の因果を証明するのは非常に難しいと述べています。代わりに、同条件の案件での競合勝率、受注・失注案件でのカード利用、対応時間を、件数を添えて報告します。 ### 競合ごとに何件の決着案件が必要ですか? 当社の目安は、1つの区分(競合、セグメント、期間の組み合わせ)あたり約20件です。これは編集上の目安で、出典のある基準ではありません。それ以下では1件で勝率が数ポイント動きます。区分を広げる前に、期間を広げてください。 ### バトルカードの利用率は、効果の証明になりますか? なりません。カードを開いた案件の勝率が高くても、それは相関です。カードを開く担当者は、もともと受注しやすい担当者かもしれません。同じ担当者の中での比較か、一部の担当者だけにカードを配る対照群の設計が、因果を示しうる方法です。 ### バトルカードの対照群とは何ですか? 1つの営業サイクルのあいだ、一部の担当者にはカードを配り、残りには配らない設計です。Kompyteの2024年の記事(英語)が説明しています。両群の勝率を同条件の案件で比べる方法は、カードが結果を変えたと示しうる設計です。 ### 経営層には何を見せればよいですか? 主要な競合ごとに3行です。同条件の案件での勝率と件数、その変化がぶれの範囲かどうか。カードを開いた案件と開かなかった案件の勝率で、相関と明記したもの。競合の動きへの対応時間の中央値と最悪値。倍率は出しません。